Away in a Manger|歌詞・和訳・意味を解説【1885年原詞】
この作品について
『Away in a Manger』は、19世紀末のアメリカで広まった作者不詳の英語クリスマス賛美歌です。長くMartin Lutherの作と紹介されることがありましたが、現在の賛美歌研究ではその帰属を裏づける証拠は認められていません。ここでは『The Army and Navy Hymnal』(1920)に収められた初期2節の系統を扱い、後世に加わった第3節は含めません。
最初の節では、星や干し草とともに飼葉桶の幼子を外から眺めています。ところが次の節の終わりでは、歌い手自身が「I love thee」「stay by my side」とイエスへ直接呼びかけます。情景描写がいつ祈りへ変わるのかを追うと、この短い2節の距離の変化がよく見えます。
対訳
No crib for his bed,
The little Lord Jesus
Laid down his sweet head,
The stars in the sky
Looked down where he lay,
The little Lord Jesus,
Asleep in the hay.
The cattle are lowing,
The poor baby wakes,
But little Lord Jesus,
No crying he makes.
I love thee, Lord Jesus,
Look down from the sky,
And stay by my side
Until morning is nigh.
A-men
寝床にする揺りかごもなく、
幼い主イエスは
愛らしい頭を横たえた
空の星々は、
横たわる御子を見下ろしていた
幼い主イエスは、
干し草の上で眠っていた
牛たちが鳴き、
かわいそうな赤子は目を覚ます
けれど幼い主イエスは、
泣き声ひとつ上げない
主イエスよ、あなたを愛します
空から私を見下ろし、
朝が近づくまで、
私のそばにいてください
アーメン
Away in a manger:away は「遠くへ去れ」という命令でなく、少し離れた場所にある飼葉桶の場面を示す。
crib:ここでは乳児用の寝台・揺りかご。飼葉桶そのものを意味する場合もあるが、manger と対比される。
laid down his ... head:自ら頭を横たえた、という穏やかな表現。
the stars ... looked down:星を人格化し、幼子を見守る存在にする。
the cattle are lowing:low は「低い」でなく、牛が低い声で鳴く動詞。
the poor baby:金銭的貧困だけでなく、起こされて気の毒な幼子への愛情表現。
No crying he makes:目的語を前に出した語順で、「泣き声を上げない」。
thee:古い二人称単数目的格。祈りの中でイエスへ直接呼びかける。
nigh:古語的な「近い」。until morning is nigh は朝が近づくまで。
飼葉桶の情景が、歌い手の祈りへ変わる
第1節にいるのは、飼葉桶で眠る幼子と、それを見下ろす星です。語り手自身の姿はまだほとんど見えません。星までが幼子を見守っているように描かれ、読者は静かな降誕場面の外側からその光景を眺めます。
第2節では牛の鳴き声で幼子が目を覚まします。それでも泣かないという理想化された静けさが保たれたあと、歌の人称が動きます。「I love thee, Lord Jesus」と、歌い手が初めて自分の声で幼子へ近づくのです。そして「朝が近づくまで、私のそばにいてください」と願うことで、遠い聖書の場面は今夜の祈りへ引き寄せられます。
この変化を見れば、作品の短さは弱点ではありません。眺めるだけだった歌が、2節の終わりには「私」と「あなた」の関係になる。その小さな距離の移動が、『Away in a Manger』が子どもの賛美歌として長く歌われてきた親密さを支えています。
原文全文
No crib for his bed,
The little Lord Jesus
Laid down his sweet head,
The stars in the sky
Looked down where he lay,
The little Lord Jesus,
Asleep in the hay.
The cattle are lowing,
The poor baby wakes,
But little Lord Jesus,
No crying he makes.
I love thee, Lord Jesus,
Look down from the sky,
And stay by my side
Until morning is nigh.
A-men
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