Trees|全文・和訳・意味を解説【木をたたえるキルマーの詩】
この作品について
『Trees』は、Joyce Kilmerが1913年8月に雑誌『Poetry』で発表した、全12行・6つの脚韻対句からなる英語詩です。連続する擬人化と、人間の詩作/神の創造の対照を読みの焦点とします。
「一本の木ほど愛らしい詩を、私はきっと見ることがない」。『Trees』の冒頭は、とても単純な自然賛美のように聞こえます。
けれど読み進めると、木は大地から乳を飲む子どもになり、神へ腕を上げる祈り手になり、鳥の巣を髪に飾る女性にもなります。わずか12行の中で、一本の木が大地、空、鳥、雪、雨を結ぶ生きた身体へ変わっていくのです。
対訳
a poem lovely as a tree 「木についての詩」ではなく、「木そのものと同じほど愛らしい詩」。
prest pressed の古い縮約綴り。
hungry mouth / earth's breast 木の根を乳を求める口、大地を乳房に見立てた母子像。
her leafy arms 枝を葉の茂る腕とし、木を女性として一貫して人格化する。
wear / in her hair 樹冠を髪、駒鳥の巣を髪飾りのように身につけるものとして描く。
bosom / intimately lives with rain 雪と雨を外から受ける天候ではなく、木の身体に触れ、ともに暮らす存在として描く。
make a poem / make a tree 同じ make を人間の制作と神の創造に用い、近さと越えられない差を同時に示す。
大地から空へ——『Trees』が描く一本の木の生命
子どもであり、祈る人でもある木
木の “hungry mouth” は大地の “breast” に押し当てられています。根が水分を吸う働きが、母なる大地から乳を飲む子どもの姿に置き換えられるのです。
ところが次の対句では、木は “her leafy arms” を上げて神を見つめる祈り手になります。大地から恵みを受ける存在が、今度は空へ向かって応答する。木は下と上をつなぐ身体として描かれています。
鳥と雪と雨を宿す身体
夏には駒鳥の巣を「髪」に飾り、冬には「胸」に雪を受け、雨とは親密に暮らします。ここで木は、ただ季節に耐える物体ではありません。鳥に場所を与え、雪を受け止め、雨と関係を結ぶ存在です。
題名は複数形の Trees ですが、本文では “a tree” が繰り返されます。特定の一本を写すというより、どの木にも見いだせる生命の姿を、一つの身体へ集めていると読めます。
二つの「作る」
最後の二行では、詩も木も同じ make という動詞で「作られる」と言われます。それでも、詩を作る人間と、木を作る神のあいだには越えられない差があります。
“fools like me” は詩人の自嘲ですが、詩を無価値だと言い切っているわけではありません。人間には木そのものを生み出せなくても、その驚きを言葉にして指し示すことはできる。『Trees』は、人間の創作の小ささを認める詩であると同時に、その小さな詩だからこそ生命への畏敬を伝えられる、という逆説を残します。
原文全文
原文出典
Wikisource — Trees (Kilmer, 1913)
参考資料
更新履歴
2026-09-04 作品研究・解説を現行方式で作成し、公開準備。
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