Silent Night|歌詞・和訳・意味を解説【英語五節版】
この作品について
『Silent Night』は、Joseph Mohrが1816年に書いたドイツ語詩にFranz Xaver Gruberが1818年に曲を付けたオーストリアのクリスマス・キャロルです。1818年のクリスマス・イブにOberndorfで初演されました。今回扱うのは『The Army and Navy Hymnal』(1920年)に載る英語5節版で、現在よく歌われる英語3節版とは構成が異なります。
題名は「静かな夜」ですが、5節を通して読むと、場面は静止していません。母と幼子の近景から始まり、羊飼い、星、東方の賢者、天使の歌へと、光と声が少しずつ増えていくところを追ってみてください。
対訳
'Round yon Virgin Mother and Child 'Round は around、yon は「あそこにいる・あちらの」という古風な指示語。「乙女なる母」は処女マリアを指す
tender and mild 身体の柔らかさだけでなく、幼子の優しさと穏やかさ
heavenly peace 単なる静かな睡眠でなく、天から与えられる平安
Darkness, flies 語順とコンマが特異だが、採用原文に従い「闇は消え去り」と読んだ。別版の句読法へ置き換えていない
Alleluia ヘブライ語由来の賛美語で「主をほめたたえよ」。音写を採用
thou didst / thou wast 二人称単数の古語形。「あなたは〜した/〜であった」。幼子キリストへの直接の呼びかけ
Alleluia ヘブライ語由来の賛美語で「主をほめたたえよ」。音写を採用
静かな夜が、歌声に満ちていくまで
第1節では、世界はほとんど静止しています。all is calm, all is bright と歌われ、視線は乙女なる母と幼子に集中します。ここでの静けさは、物語が終わった状態ではなく、これから知らせが広がる前の小さな中心です。
第2節では羊飼いが天使の歌を聞き、第3節では幼子の誕生の喜びが前面に出ます。第4節になると星が東方の賢者を導き、視野は遠い場所から来る人々まで広がります。最初の母子像だけだった世界に、目撃者と礼拝者が次々に加わっていきます。
そして第5節では、ついに歌い手自身が With the angels let us sing と参加します。天使が歌っているのを眺めるだけでなく、「私たちも歌おう」と現在の歌唱行為へ接続するのです。
この5節版で見ると、Silent Nightの「静けさ」は無音の完成形ではありません。静かな一点から、光と知らせと歌が周囲へ広がっていく出発点です。よく知られた冒頭の印象だけでなく、全節を通して読むと、このキャロルが「静寂から共同の賛歌へ」動いていく作品であることが見えてきます。
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