Skip to My Lou|歌詞・和訳・意味を解説【アメリカ伝承歌】
この作品について
『Skip to My Lou』は、19世紀中頃のアメリカで歌われた作者不詳の英語伝承歌です。若者たちが歌いながら相手を替えて遊ぶ play-party の歌として広まり、短い節をその場に応じて足したり入れ替えたりしながら伝えられてきました。今回扱うのは、基本リフレインと8つの変化節からなる一般的な伝承形です。
歌詞には、蠅、荷車、踊り相手、鳥、猫、テキサス行きまで、互いにあまり関係のないものが次々に現れます。ただし、その中には実際の遊び方を知ることで意味がはっきりする節もあります。特に「相手を失った」「別の相手を見つける」「赤い鳥がだめならカケスでいい」という流れは、この歌がどのように遊ばれていたかと深く結びついています。
対訳
Lou この歌の特徴的な語。人名・愛称のようにも見えるが、この歌における正確な由来や指示対象ははっきりしていないため、訳では「ルー」と音を残した
buttermilk 伝統的には、バターを作るためにクリームを撹拌したあとに残る液体。飲用や料理にも使われた
shoo 蠅や動物などを追い払うときの掛け声。「しっ」「あっちへ行け」に近い
partner ここでは恋人一般というより、この遊びの中で組になっている踊り相手を指す
jay bird カケス。北米では町や公園などでも見られる身近な鳥。この句では red bird がまず望まれるものとして置かれ、それが得られなければ jay bird でもよい、という次善の選択になっている。「目当てがだめなら別でもいい」という軽さやからかいを含む
相手を奪い、奪われながら続いていく歌
『Skip to My Lou』の歌詞だけを眺めると、バターミルクの蠅、赤い荷車、鳥、猫、テキサス行きと、ほとんど関係のない場面が次々に現れます。しかし、この歌がもともと play-party で使われていたことを知ると、その中のいくつかの節はまったく違って見えてきます。
play-party は、歌と遊戯とダンスを組み合わせた若者たちの集団遊びです。19世紀から20世紀初頭のアメリカには、宗教的・社会的な理由から通常のダンスを好ましくないとする家庭や地域もあり、そのような環境でも楽しめる娯楽として各地で行われました。『Skip to My Lou』も、その代表的な歌の一つでした。
1938年に記録された遊び方では、男女の組が輪を作り、その中央に一人だけ相手のいない skipper が立ちます。歌が始まると、skipper は輪の中の誰かの相手を選び、その人と一緒に踊ります。相手を奪われた人は今度は自分が skipper となり、別の相手を探します。こうして、一人が誰かの相手を取り、残された人がまた別の相手を取りに行く、という交代が続いていきます。
この遊び方を知ると、I lost my partner, what'll I do?――「相手を失くした、どうしよう」と、続く I'll get another, as pretty as you――「別の相手を見つけよう、あなたと同じくらい可愛い人を」が、単なる恋愛の歌ではないことが分かります。実際に踊り相手を取られた人が、次の相手を探しに行く。その場で起きていること自体が歌詞になっているのです。
Can't get a red bird, jay bird'll do. という一見唐突な鳥の節も、この流れの中に置くと意味が見えてきます。1938年に記録された異伝では Can't get a red bird, a blue bird'll do.――「赤い鳥がだめなら青い鳥でいい」と歌われています。同じ伝承には Pretty as a redbird――「赤い鳥のようにきれい」、さらに Can't get that'n, another'll do――「あの相手がだめなら別の相手でいい」という節も残されています。
つまり、「赤い鳥がだめならカケスでいい」という一節は、鳥について語っているだけではありません。実際の遊びの中で言えば、「目当ての相手が取れないなら、別の相手でもいい」という軽口に重なります。誰かの相手を奪い、奪われた側がすぐ次の相手へ向かう遊びだからこそ、「あの子がだめなら次」という少し失礼なからかいも笑いとして成立します。
ただし、このようにすべての節を一つの筋書きとして読む必要はありません。バターミルクの蠅、赤い荷車、クリーム壺の猫などは、相手の交代を描く物語の一場面というより、歌を続けるために差し込まれた独立した節です。『Skip to My Lou』は口承で伝えられるなかで数多くの節を取り込み、その場に応じた即興の一節や、参加者をからかう言葉まで加えられてきました。
だから、この歌の脈絡のなさは欠点ではありません。歌詞は次々に入れ替わっても、三度繰り返して Skip to my Lou, my darlin' へ戻る型は変わらない。そして歌う人たちの側でも、相手が次々に入れ替わっていく。言葉を交換しながら、人も交換していく――その仕組みそのものが『Skip to My Lou』という遊びの面白さなのです。
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