Sometimes I Feel Like a Motherless Child|歌詞・和訳・意味を解説【黒人霊歌】
この作品について
『Sometimes I Feel Like a Motherless Child』は、19世紀に形成されたアフリカ系アメリカ人の英語霊歌です。個人の作詞者は確定していません。今回扱うのはR. Nathaniel Dett編『Religious Folk-Songs of the Negro』(1927年)に採録された3節版で、方言的な綴りも底本どおり扱っています。
冒頭の「母のない子どものように感じる」という一行は、一度では終わらず三度繰り返されます。なぜ同じ言葉を重ねるのかを考えながら、その直後に出てくる home との距離に注目してみてください。
対訳
motherless child 母を亡くした、または母から引き離された子ども。奴隷制下の家族分離を響かせうるが、特定の一件に限定しない
A long ways from home 標準的には a long way だが、複数形 ways を用いる口語。「故郷から遥か遠く」
If this was judgment day 標準的な反実仮想なら were もありうる。最後の審判の日が今なら、と仮定する
judgment day 神がすべての魂を裁く終末の日
Eb’ry every の音を示す方言的省略
「母のない子」の反復が作る孤独
この歌は、孤独の理由を詳しく説明しません。Sometimes I feel like a motherless child と三度言い、そのあとに A long ways from home とだけ置きます。情報としては少ないのに、同じ言葉へ戻り続けることで、抜け出せない感覚の方が先に伝わってきます。
この比喩は、奴隷制下で現実に起きた家族分離の歴史と強く響き合います。ただし、歌を特定の一人の自伝へ固定する必要はありません。motherlessという語は、母との死別だけでなく、家族や共同体から引き離された感覚を受け止められます。
第2節では、視野が suddenly 個人から every little soul へ広がります。もし今がjudgment dayなら、誰もが祈るだろう。孤独な「私」の歌だったものが、最後の審判の前ではすべての魂が弱い存在だという共同の場面へ移ります。
そして第3節の almost gone と heavenly land は、疲れ切って消え入りそうな感覚、死への近さ、天上の故郷への憧れを一つに固定しません。母、home、heavenly landは別々の言葉ですが、どれも「自分が帰属できる場所」という方向へ重なっていきます。反復の少ない語数の中で、個人的な孤独が歴史的・宗教的な喪失へ広がる歌です。
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