The Raggle Taggle Gypsy|歌詞・和訳・意味を解説【スコットランド伝承歌】

The Raggle Taggle Gypsy
スコットランド伝承バラッド/17–18世紀/Child 200・採用版は冒頭4行

この作品について

『The Raggle Taggle Gypsy』は、スコットランド系の英語伝承バラッドで、Francis J. Childの分類では200番、Roud Folk Song Indexでは1番に当たる広い伝承を持ちます。今回扱う採用原文は、その長い物語の冒頭4行だけです。三人のgipsiesが館の戸口へ現れ、声を重ねる場面で終わります。

有名な長い版では、この後に貴婦人の旅立ちや夫の追跡が続きます。しかし今回の4行にはまだ出てきません。先の物語を補わず、館の内側と、外からやって来る三人の声が作る最初の場面だけを見てみてください。

対訳

There were three old gipsies came to our hall door.
They came brave and boldly-o,
One sang high and the other sang low,
And the other sang a raggle-taggle gipsy-o.
年老いたジプシーが三人、私たちの館の戸口へやって来た
堂々と、大胆にやって来た
一人は高い声で歌い、もう一人は低い声で歌った
そして残る一人は、ぼろをまとったジプシーの歌を歌った

gipsies 歴史的にロマの人々や、ロマと見なされた旅する集団を指した外名。現代では固定観念や侮蔑を伴いうる。訳では歌の歴史語として「ジプシー」を残し、ここで注意を付した

hall door 単なる廊下の扉でなく、大きな館・屋敷の入口

brave and boldly brave は勇敢さに加え、立派な様子・堂々とした姿を含みうる

raggle-taggle ぼろぼろで不揃い、乱れた様子をリズミカルに表す語。単一の辞書語より音と軽侮を伴う

gipsy-o 末尾の -o は歌唱上の掛け声・韻律

解説

館の境界を、三つの声が越えてくる

最初に示される場所は our hall door です。hallは大きな館や屋敷を思わせ、内側にいる語り手たちの生活空間と、外から来る旅人たちの境界を作ります。その戸口へ、三人のgipsiesが現れます。

彼らはこそこそ入って来るのではありません。brave and boldlyと、堂々と大胆にやって来ます。raggle-taggleという語はぼろぼろで不揃いな外見を響かせ、歴史的には軽侮の色も持ちますが、その姿と態度は一致しません。見下され得る外見と、ためらわない登場が並びます。

さらに三人は、一人が高く、一人が低く、残る一人がraggle-taggle gipsy-oを歌います。人物の説明より先に、声の高低と歌が空間を満たします。社会的な境界を越えてくるのは、まず彼らの音なのです。

なおgipsyは歴史的な外名で、現代ではロマの人々に対する固定観念や侮蔑を伴いうる語です。長いバラッドにはロマを誘惑者・他者として描く異版もあります。今回の短い採用本文では、後続の物語を勝手に補わず、館の入口に響く三つの声と、その歴史的な言葉の重さを分けて読むことが重要です。

原文全文

There were three old gipsies came to our hall door.
They came brave and boldly-o,
One sang high and the other sang low,
And the other sang a raggle-taggle gipsy-o.

原文出典・参考資料

更新履歴

コメント

このブログの人気の投稿

Percy French – The Mountains of Mourne|歌詞・和訳・意味を解説

My Old Kentucky Home|歌詞・和訳・意味を解説【1853年原詞】

Sweet Betsy from Pike|歌詞・和訳・意味を解説