The Rising of the Moon|歌詞・和訳・意味を解説【1865年】
この作品について
『The Rising of the Moon』は、アイルランドの詩人John Keegan Caseyが1865年頃に書いた英語の民族主義歌です。1798年のアイルランド反乱を題材にし、Casey自身が関わった1860年代のIRB・Fenian運動の時代から、過去の蜂起を記憶し直す作品です。今回扱うのは5節版です。
題名の「月の出」は、最初は詩的な夜景ではなく、槍兵が集まる具体的な時刻です。ところが最後の節まで読むと、同じ言葉が別の意味を持ち始めます。月が「時刻」から何へ変わるのかを追ってみてください。
対訳
Shawn O’Ferrall アイルランド人名 Seán O’Farrell の英語化綴り。歌中の伝令役
ma bouchal アイルランド語 mo bhuachaill に由来する「私の若者/少年よ」という呼びかけ
ordhers / ould / risin’ / gatherin’ アイルランド英語の発音を示す綴り。orders / old / rising / gathering
pikes 長い柄の先に刃を付けた槍。1798年反乱軍の象徴的武器
Shawn O’Ferrall アイルランド人名 Seán O’Farrell の英語化綴り。歌中の伝令役
signal token 仲間と確認する合図・しるし
whistle up 口笛で曲を始め、合図を送る
mud-wall cabin 泥壁の質素な農家・小屋。各戸から密かに見張る共同体を示す
「月の出」が、次の蜂起の時刻になるまで
第1節と第2節では、月は実用的な合図です。隊長からの命令を受け、pikesを集め、川辺の決められた場所へ向かう。その時刻が at the risin' of the moon と定められています。秘密の伝令と集合計画の言葉です。
第3節になると、月は warning light になります。各家から目が夜を見張り、囁きが谷を伝わり、千の刃が光る。個人同士の会話だった歌が、共同体全体の蜂起へ広がります。緑の旗の下で自由を叫ぶ第4節では、月の出は集団行動の象徴に近づいています。
しかし1798年の反乱は敗北します。最終節はその苦い運命を否定しません。それでも歌は過去で終わらず、いまなお先人の足跡をたどろうとする心がある、と現在へ戻ってきます。そして再び at the risin' of the moon と結びます。
ここで同じ言葉の意味が変わります。最初は一夜の集合時刻だった月の出が、最後には「次に立ち上がる時」を示す未来の合図になります。Caseyは1798年を単に追悼するのではなく、敗北した出来事を後代の行動へ接続しました。『The Rising of the Moon』では、記憶すること自体が次の時刻を待つ行為へ変わっているのです。
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